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こんにちは!
本堂こまちです。

今回は斎藤環『オープンダイアローグとは何か』をご紹介します。

対象:医師や看護師等の医療職の方、セラピストなどの援助職の方、こころの病気に苦しんでいる当事者やその家族(特に統合失調症の方)

わかりやすさ
こころが励まされる度

読了時間:5時間

『オープンダイアローグとは何か』とはどんな本?

オープンダイアローグとは、フィンランド発祥の新しい治療法です。
著者はひきこもりの方との関わりで著名な精神科医、斎藤環氏。
この本はオープンダイアローグに魅せられた著者が、
欧州の事例や論文を引き、オープンダイアローグの今後の可能性を探る本です。

 

『オープンダイアローグとは何か』のここに注目!

オープンダイアローグとは何かで本堂が注目した点は3つです。

  1. 現役精神科医による患者への優しい目線があります
    著者の斎藤環氏は現役の精神科医だけあって、医学的根拠に準拠しており、安心です。
    そして何より当事者の方が読む場合に嬉しいのは、患者に対する記述がとにかく当事者への敬意にあふれているところです。
    私自身、うつ病の本を読むとき、作者の心無い記述にひとり傷ついたりしたことがありますが、この本に限ってはそのリスクはとても少ないと考えていいと思います。
    なぜなら、斎藤環氏だけでなく、オープンダイアローグの中心人物であるセイックラ氏自身も、
    当事者への敬意にあふれた人物であるからです。
    そういう意味で、今現在こころの病に苦しんでいらっしゃる当事者の方にとっても、安心できる内容になっているかと思います。
  2. 海外の貴重な症例の紹介があります
    オープンダイアローグとは何かの最も大きな利点は、通常英語でしか読めない海外の症例に気軽に触れられる点です。
    本著では統合失調症とPTSDの症例についてのオープンダイアローグが実際の会話を用いて取り上げられています。
    良い関わり方と悪い関わり方の双方を比較する記述もありますので、それを読めばオープンダイアローグと他の家族療法の違いも理解しやすいと思います。
  3. 生きたコミニケーションのヒントがあります
    本著はオープンダイアローグの紹介を目的とした本ですが、端々にコミュニケーションの大切なヒントが潜んでいます。
    例えば「語るための足場を提供する」というポイントがあります。このポイントは病的な事柄に関しても話し合うということなのですが、
    辛いことや語りづらいことを語れる場を作ることはオープンダイアローグ以外のコミュニティにおいても、とても大切なことだと思います。本著を読んでいると突然、ふっと涙が流れるような、なんだか許されたような気分になりました。小説でも詩でもノンフィクションでもない、論文集でこういう感情が湧くことはとても久しぶりでした。

『オープンダイアローグとは何か』を読む上での注意点

さて、次は『オープンダイアローグとは何か』を読む上での、注意点をお知らせいたします。

  1. 日本の事例は紹介されていません
    オープンダイアローグは、まだまだ日本では実証データの乏しい治療法です。
    そんなこともあり、残念ながら本著では日本の事例は紹介されていません。
    「日本での実例が知りたいのに‥」という方は少し系統は違いますが、
    べてるの家の書籍などを当たられてみればいいのではないかと思います。
  2. 少し難しい哲学者や心理学の歴史的経過がでてきます
    本著では一部ですが、オープンダイアローグに影響を与えた哲学者や心理学の歴史的経過が出てきます。
    ですので、心理学を専門的に勉強していない方にはなじみがない言葉や理解できない用語なども多少ですが、出てきます。
    本堂も心理学は素人ですので、ラテン派うんぬんなどはさっぱりわかりませんでした笑。でも、そこを多少読み飛ばしても、
    十分に読み応えのある本でしたので、ぜひ心理学や哲学初心者の方も「わからないところはスルー」という心持ちで読んでいただければ幸いです。

『オープンダイアローグとは何か』のまとめ

『オープンダイアローグとは何か』のまとめです。
本著は論文集の超訳でありながら、当事者への敬意と今後の可能性を感じさせる良書でした。

ぜひ、医療関係者の方だけでなく、こころの病の当事者の方とそのご家族にもご一読いただきたいです。
そして、オープンダイアローグが今後日本でどのように広まっていくのか、希望を持って見守りたいと思います。

今回もお読み下さり、ありがとうございました。